エミノニュのサバサンド屋台船
サバサンド。イスタンブールの名物といってよいと思う。焼きサバとスライスした玉ねぎ、レタスなどをバゲットに挟んだものである。焼きサバがパンに合うのか?!と思うかもしれないが、これが意外に合う。

焼きサバを売る屋台はイスタンブールのあちこちで見られるらしいが(自分は見たことはあると思うが自信を持って「あそこで」とは言えない)、有名なものはガラタ橋のたもと、金角湾に面した旧市街側(エミノニュ)の船を使って営業している屋台船だ。

なぜ船なのかだが、(未確認の情報だが)昔は獲ってきたばかりのサバを漁船の上で調理してパンにはさんで売っていて、漁労→サバサンドの販売、という流れからサバサンド屋専業となり、昔の名残から船で調理・販売するようになったらしい。

1988年、初めてイスタンブールを訪れたが、当時の『地球の歩き方』には「パラムート」なる魚の記述があり「イワシより大き目の白身の魚。ガラタ橋の近くに集まっている漁船の上でパラムートをフライにし、フランスパンの間にはさんで、紙につつんで渡してくれる。…昼時にはトルコのサラリーマンもこのサンドイッチを片手にかじりながら休み時間を楽しんでいる」とある。調べてみるとトルコ語の「パラムート(palamut)」とはカツオのことらしいが、この時の『歩き方』の記述は誤りなのだろうか? それとも地元民がイワシより大きい白身の魚をパラムートと呼んでいたので『歩き方』の記述もこうなったのか? 

90年代初めだったと思うが、『歩き方』の記述が「サバサンド」となり、使っているサバは輸入物ということまで記された(その後、そういった詳細な記述はなくなった)。

サバサンドの屋台船は被写体として気に入っており割と撮影していたので、下に並べてみることにする。



(1990年3月)。写真のサイズがそんなに大きくなくわかりにくいと思うが、サバは直火ではなく平たい大きな鍋で揚げ焼きのような感じで調理している。それから屋台船は本当に小さい。こうした船が何艘か並んで営業していた。




(1994年7月) 90年に撮った屋台船よりも店らしくなった。




(1994年7月) 一つ上の写真と同じ屋台船。この船ではサバは直火で焼いていた(サバの油のため大きな炎が出ているのか?)。それから一番右に写っているパンに具を挟んでいるところを見ると赤い具材があることがわかる。トマトも使われているのだ。




(2004年8月) 一つ上の写真から10年という月日が過ぎサバサンド屋台船はより本格的な店と化した。店で働く人もいかにもトルコという感じの服を着ている。船内のトレイの上には赤い具材が見え、この店もトマトを使っている。ちなみにその後食べたサバサンドにはトマトが使われていただろうか? たぶん使われていなかったと思うが。




(2004年8月) 一つ上の写真と同じ年に撮った別の屋台船。後方に写っている塔はガラタ塔。




(2011年8月) 2004年よりも船は一回り大きくなったか?




(2015年10月) いつからこうなったのか知らないのだが(2013年にイスタンブールを訪れたときはすでにこうなっていた)、派手な船が屋台船というか常設の店である。いくつかのネット上の情報によると、以前の屋台船は衛生上や景観上問題があるということで廃止(営業禁止?)となり、上の写真のような形でサバサンド屋は存続することになったとか。景観的には以前のものの方が魅力的だと思うが、新しいの船の方が調理場の衛生状態はよいとは思う。ちなみに、以前、屋台船は基本的にはガラタ橋のボスポラス海峡に近いがわにあるエミノニュの船着き場近辺にあったが、上に見える新たな店はそれとは逆の金角湾に入っていったところに設けられている。




(2019年2月) 残念ながら船の向こう側から撮った写真がないのだが、船の前には2015年にはなかった屋根つきの食事スペースが設けられ、より本格的な店舗化している。