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2024年5月 Archive

『にっぽん縦断こころ旅』と母

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NHK・BSに『にっぽん縦断こころ旅』という番組がある。

俳優の火野正平さんが、視聴者から寄せられた、その思い出の地などをつづった手紙をもとに日本各地を自転車で訪れるという番組である。

今年(2024年春)からはNHK・BSがBSとBSプレミアムからBSとBS4Kとに変更され、放送時間なども少し変わったが、僕がこの番組を続けて見始めた2020年には、BSプレミアムで朝7時45分からの15分の朝版と午後7時からの30分の「とうちゃこ」が放送されていた。

母は昔からの習慣で夕方から夜にかけてはNHKの地上波を流しっぱなしにしていたのだが、ただの習慣で、あまり真剣に見ている風でもなかった。そんなわけで僕は、NHKの7時のニュースの政府広報っぽさに拍車がかかってきていたこともあり、何となくBSプレミアムにチャンネルを合わせ、この番組を見始めた。

自転車であちこちを訪ねるという形の旅番組が母の目には新鮮に映ったのか、興味深くみてくれていた。

ところで、夜の放送が「とうちゃこ」というのは、正平さんが、「到着」のことを「とうちゃこ」と言うので、そのように呼ばれているらしかった(この番組は2011年から放送されているが、最初からそうだったのかどうかはわからない)。

2021年の夏のことだったと思う。東京の家の様子を見に行ったとき(郵便受けがあふれていないかとか排水口のたまり水が蒸発して下水のにおいが部屋にあがってきていないかとか)、いつもの通り実家に電話をかけて、食事のことを確認した(その後東京へ日帰りで行くことが多くなったがこの時は東京で1泊した)。

母の認知力はかなり低下していて、電話を切ってすぐにその内容がわからなくなる恐れがあったので、携帯に電話して、それを持って冷蔵庫まで行って中に入れておいたおかずなどを確認するように言った。

「ちょっと待ってね、今冷蔵庫のところに行くから」

「とうちゃこ」

電話口の母がこの一言を発した。

今話したことも思い出せない状態だった母がテレビで聞いた言葉を発したのは驚きであった。

認知症では記憶のインプットはできているのだがアウトプットができない、ということを何かで目にしたことがあるが、母の頭には「とうちゃこ」という言葉がちゃんとインプットされていたのだ(やはりこの番組を気に入って見ていたのだと思った)。

そういえば、ほかにも強い印象を受けたと思われることは、何かの拍子に思い出すことがあったなあと思う。

そのような母との思い出のある番組だが、火野正平さんの持病の腰痛が悪化したため、この春の旅が中止されてしまった(春と秋に旅をするというパターンの番組)。

火野さんもけっこうなご年齢なので、とても心配だ。

火野さんの腰の具合がよくなって、思い出深いこの番組が少しでも長く続くことを祈っている。

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